読書メモ

・「動かないコンピュータ
(日経コンピュータ:編、 \1,500、日経BP社) : 2003.07.31

内容と感想:
 
「動かないコンピュータ」は情報システム開発者やユーザのための雑誌「日経コンピュータ」の同名の名物連載記事を単行本化したものである。私も新卒でシステム開発会社に入社した頃、この雑誌を定期購読していた(現在は購読していない)。もちろん同掲載もよく読んだものであったが、経験は少なくとも仕事柄、身につまされる思いがしたものだ。
 コンピュータは動かなければただの箱である。本書は副題「情報システムに見る失敗の研究」にあるように失敗から学ぼう、今後の開発に生かそうという前向きのものである。単なる失敗を叩くゴシップ記事には終わらない。その原因とどう対処したかまで踏み込んでいる。
 本書で取り上げる情報システムとは社内システムから企業間取引システム、一般顧客が直接接続するインターネット取引システムなど、大規模なものが多い。またハードはメインフレームからオフコン、パソコン等の混在環境など変化も激しい。ユーザのシステムへの要望も複雑化し、次々に新技術が登場する。システム開発者、管理者などシステムに関わる人々の苦労は耐えない。それもこれも企業利益、一般顧客の満足度向上の追求のためであり、システムに関わる者は常にユーザの顔を意識しなければならない。
 今なお時々ニュースで報道されるシステム障害。報道の裏では相変わらずシステム障害との戦いが繰り広げられている。
 形態や規模は異なるとは言え、私もシステム開発に関わる者として、どの記事も考えさせれれるものばかりである。世界的に品質向上への関心は高まりを見せ、様々なシステム開発プロジェクトの手法などが論じられることが多くなっている。システムは不完全な”人間”が作るものだからとか、”ソフトウエアにバグはつき物”と突き放すのではなく、出来る限り不具合を生み出さないよう努力を惜しんではならない。
 自らを戒める意味でも、本書を身近に置いて、題名だけでも見えるようにしておくとよいかも?

更新日: 03/08/01