読書メモ
・「声に出して読みたい日本語」
(斎藤孝:著、 \1,200、草思社) : 2003.04.20
内容と感想:
第2作「声に出して読みたい日本語2」の方を先に読んだのだが、勿論そのきっかけとなったのはベストセラーとなった本書の存在。構成は第2作とほぼ同じ。
そもそも日本語を含め、言語というものは人間同士のコミュニケーションの道具である。きっと日本語以外の言語を使う海外の人々にも、それぞれに自分らの言語の中に名文とか、言葉の宝石と言えるようなものを持っていると想像する。私はたまたま日本語を母国語として生まれたが、美しい、とか心地よいと感じる言葉が日本語の中に存在することを素晴らしいと思う。日常で使う言葉(会話、Eメール、書き物など)は、美しい・心地よいとかよりも、実用性重視になってしまう。私も訓練が足りないから、他人が美しい、とか心地よいとか感じられる言葉を発信することは非常に難しいと感じている。本書で取り上げられているような文章は、なかなか、そのまま日常で使われるようなものではないが、長い歴史の中で鍛えられ、洗練されてきた日本語の素晴らしさを感じられるのではないだろうか。
<目次>
一、腹から声を出す
二、あこがれに浮き立つ
三、リズム・テンポに乗る
四、しみじみ味わう
五、季節・情景を肌で感じる
六、芯が通る、腰肚を据える
七、身体に覚え込ませる・座右の銘
八、物語の世界に浸る
著者は”暗誦文化の衰退”に危機感を抱いておられる。本書で取り上げられているものは、私も国語の教科書で目にしたことのあるようなものもあるが、教科書だけでは取り上げきれないような、”学校教育からは抜け落ちがちなもの”を多く取り上げて引用されている。義務教育も週5日制となり、ますます学校での学習量は減少するであろう。きっと他の科目同様、国語の時間にもしわ寄せが来ることは容易に想像できる。名文だけが国語ではないが、子供のうちに暗誦などを通して日本語の良さを感じてもらうのも、国語の授業から排除されて欲しくないな。
やはり本書を楽しむには”声に出して”読まなければ効果がない。ちょっと千曲川の川原に出掛けるとか、山の頂などで大声で読んだりすると最高かも知れない。
「おわりに」で著者は面白いことを言っている。暗誦の効果として、意味が分からなくても子供の頃から暗誦することによって、”母国語の強い顎をつくる”ことになると。更には本書に取り上げたような文章は噛めば噛むほど味が出る「するめ」だと。
更新日: 03/04/24
|