読書メモ
・「竹中教授のみんなの経済学」
(竹中平蔵:著、 \1,300、幻冬社) : 2003.05.28
内容と感想:
先だって読んだ「経済ってそういうことだったのか会議」の後に出た本書では、竹中教授の肩書きは小泉内閣の経済財政担当大臣へと変わっていた。TV等メディアでの露出度も急に高まり今では、彼の名も塩爺(塩川財務相)と同じくらい有名になっている。
内容的には「経済って・・」と同じ路線で、やさしく経済を解説するという姿勢にかわりはない。ただ、こっちは対談形式ではなく、テーマがちゃんと分けられていて、ある家族の構成員(お父さん、お母さん、お姉さん、お兄さん、お婆ちゃん)がそれぞれの立場で経済を見ていく、という形になっている。同じ著者が書いているだけあって、どこかで読んだ文章だなと、思う箇所も多い。しかし新たに学んだ事もある。例えば、
・銀行貸付のGDP比はアメリカの35%に対して、日本は100%と異常に高い。つまり貸し過ぎ。しかし一方で貸し渋りとの批判もある。
・今の日本の地価の合計はアメリカのそれの約2倍(バブルの時は4倍)。
・過去35年間の消費者物価指数が5倍になったのに対し、地価は百数十倍という伸び。
・日本の住宅(建物部分のみ)価格はアメリカの3〜4倍
・日本の累積財政赤字はGDPを上回っている。巨額の赤字を正常化するにはこれ以上、借金を増やさないこと。経済が成長していけば、赤字額は相対的に小さくなる。
・IT革命はライフスタイルを大きく変える可能性があるから革命という。ITにより経済取引のコストを限りなくゼロに近づけることも可能になってきた。
・生産性の高いものは内外価格差とは無縁である。生産性の低いものを保護しているから、(コストが価格に転嫁され)消費者は高い値段で買わされることになる。
先日、りそな銀行への公的資金投入が決まり、実質国有化に等しい情勢となった。首相も「金融危機を起こさないための予防的措置であり、破綻処理ではない」と言っている。政府は金融不安を起こさないように躍起となっているが、首相も竹中大臣も強い意思のもと経済・財政改革に取り組んでいる最中であるし、それを、「それ見たことか」と自民党の身内が足を引っ張って、竹中降ろしを叫び始めるなど、いったいどういうつもりかと言いたくなる。改革路線を変更したら、また逆戻りするだけ。何の解決にもならない。完璧な解を求めるのは酷である。反対するなら代替案を出せ。もっと長い目で見られないのか?
そういえば塩爺は今年の総裁選では小泉さんが再選されるだろうと予想していた。それだけ対抗馬がいないということであろう。自民党も人材不足。当分の間は小泉首相は強気で行けるということだ。
更新日: 03/05/29
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