読書メモ

・「年収300万円時代を生き抜く経済学
(森永卓郎:著、 \1,400、光文社) : 2003.12.20

内容と感想:
 
著者の肩書きはよく分からないが、テレ朝のニュースステーションのコメンテーターか何かで顔を見たことがあるような、ないような・・。学者ではなさそうだが、経歴を見る限りではエコノミストの一種であろう。
 「年収300万円時代」という題名も衝撃的だが、著者は確実に日本はそういう時代になりつつあると言う(300万円という額はグローバル・スタンダードな年収らしい)。そして、その暁には「新たな階級社会」が登場すると。国民一億、総”中流”の時代はもう終わったと言っているのだ。私にもその実感はある。国民は馬鹿ではない。そんなことは薄々感じているに違いない。
 小泉改革は「金持ち優遇社会への転換」に向かっている。それを支持している国民はどうかしている。首相は就任当初「痛みを耐えて欲しい」と言った。しかし「痛みの先に何があるか」は曖昧であった。改革は進んでいるのか?成果は出ているのか?疑問の声も多い。「小泉は口だけだ、パフォーマンスだけだ」との批判もある。

 経済学者が書くような小難しい専門書ではない。一般庶民が経済を身近に感じられるだろう(身に沁みる?)。ポイントをまとめると、

・「日本経済の現状」
自殺率と失業率の相関
デフレ放置政策の罪 → 弱者を直撃
倒産、リストラ、賃金カット、サービス残業、ホームレス
フリーターの急増、若年失業率の増加
年金等の社会保障制度への不安、不信の高まり

・「新たな階級社会」
成果主義の賃金体系、サバイバル・ゲーム
中流が消失し、所得格差が拡大する
知的創造社会化

・「豊かな」生き方
人生の目的:いかに楽しく人生を過ごすか(欧州市民)
成長率の鈍化、成熟社会
ある種の「あきらめ」こそが必要
お金のない人間はリスクをとってはいけない。へたな資産運用に手を出すものではない。

 本書を読んで元気が出るだろうか?ある意味で勇気が出るだろうし、一方で絶望的でもある。結論としては「高収入は諦めなさい。それよりももっと人生を楽しみなさい」ということだが、エコノミストの意見としてはどういうものか?”諦めの境地”である。これは日本人の活力を削ぎかねないのではないか?
 寝る間も惜しんで働き、極一握りの金持ちになりたいか、年収300万でそれなりに楽しく過ごすか?判断は読者次第である。

更新日: 03/12/23