読書メモ

・「最新Webサービスがわかる
 〜 まるごと図解シリーズ
日本IBM(株) jStartチーム:著、 \1,580、技術評論社 : 2002.09.28

内容と感想:
 
-目次-
第1章 Webサービスがビジネスモデルを変える
第2章 Webサービスが拓く新しいビジネスの世界
第3章 Webサービスを支える技術(1)〜XML、SOAP
第4章 Webサービスが支える技術(2)〜WSDL、UDDI、その他
第5章 Webサービス開発とは
第6章 サンプルで学ぶWebサービス開発
第7章 Webサービス活用事例
第8章 Webサービスのセキュリティ

 最近よく目や耳にするようになったWebサービスだが、個人的には目的や仕組みはだいたいは分かっているつもりだが、ビジネスとしては実際のところ”どうなの?”という疑問の方が大きい。
既に一般には目に見えない形で導入されているのかも知れないし、まだ課題も多いのかも知れない。なにかと多忙な自分としては、そこのところを簡潔にまとめて読ませて欲しいものと期待して本書を手にする。
 Webサービスの仕組みの基本は、Web上にあるアプリケーション機能を、他のWebサイトやアプリケーションから動的に呼び出し、利用できるようにすること。これには「接続の簡単さ」と「マルチプラットフォーム性」が期待されており、そのためにも多くの企業や開発者が協力して、オープンな仕様を提案し、実現させている。
 本書では、Webサービスの基本技術である、XML、SOAP、WSDL、UDDIなどを図解で易しく解説している。ビジネスシステムの連携の簡単な例(お花屋)などでイメージし易い。
 メッセージ形式を定義しているSOAPはHTTPやSMTPの上での通信を想定しているが、ビジネスシステムとして課題となるのは、通信の信頼性。安心してユーザや取引先にシステムを使ってもらうためには、インターネットという不安定なネットワークの弱点を補い、信頼性を高める仕組みが欠かせない。HTTPについてはメッセージ保証を可能にするHTTPR(Reliable HTTP)のプロトコル標準化が進められているようだ。
 また、ユーザを犯罪から守るためにもセキュリティは避けられない。暗号化や署名、認証についても解説されている。日本では2001年4月に電子署名法が施行されているが、まだ身近ではない。公開鍵証明書を用いた本格的なインターネット・サービスはいつになることであろう。技術的にはサービス提供可能であるのに、どうして一気に本格化しないのかが不思議である。まだ様子見なのだろうか?それとも認知されなさ過ぎるのか?IT立国を謳うのなら公共サービスへの導入など、国の後押しが必要だろう。国も本気を見せて欲しいもの(ただし国民の個人情報の保護は必須であり、最優先である)。
 著者が日本IBMということもあり、開発例などはIBM製品(WebSphereやDB2)を使用したJavaベースのシステムとなっている。本の性格上、具体的な開発方法の解説には力を入れておらず、付録CD-ROMなどもないため、実際に自分でサンプルを動かしてみるわけにはいかない。そのせいもあり、開発のイメージはほとんど掴めないだろう。
 Webサービスを支える技術は仕様が公開されており、オープンな実装も存在し(Apache-SOAPなど)、必ずしも市販の製品でなくともシステムを実現可能である。ただ、開発効率などを考慮すると、開発環境が整備されたものを使用するのがよいのかも知れない。
 私がWebサービスに注目するのも、インターネットを通した、より便利な世界の広がりが期待できることだ。今後、PCだけでなく様々な道具がネットワークに接続されるようになるに従い、サービスも無限に広がるだろう。そのサービスを支えるのはWebサービスに違いない。きっといつかは、ユーザには裏でWebサービスが機能していることすら意識させないような、当たり前の世界になっていることであろう。

更新日: 02/09/28