読書メモ
・「一冊で読む前田利家」
(川口素生:著、 \505、成美文庫) : 2002.08.24
内容と感想:
副題の「乱世を生き抜いたナンバー2のサバイバル術」、「利家&おまつ100の謎」にあるように、戦国時代に織田信長に使え、その死後は豊臣秀吉に協力、更に秀吉死後は、徳川家康に謀反の疑いをかけられながらも最大の外様大名として江戸時代を生き抜く前田家の礎を築いた利家とまつ。
現在、NHKの大河ドラマ「利家とまつ」でも主役の夫婦。最初、大河ドラマにこの夫婦が取り上げられたときには正直いって「何で?」という印象だった。戦国史は好きなので利家の名前は当然知っていたが、どうも地味なイメージを持っていたし、その妻の名が”まつ”であることも、その時初めて知ったほど(ドラマでは演技力の良し悪しは別として松嶋菜々子の”まつ”が唐沢”利家”を食っている印象)。もう時代劇のヒーローは出尽くした、といった感(脇役が注目される時代になったのかも知れないが)。
確かに改めて聞くと、利家は常にナンバー2だったのかも知れないと、納得もできないこともない。それでも、信長時代は利家よりも明智光秀や秀吉のほうが出世頭だったし、上役ともいえる重臣・柴田勝家や滝川一益らのほうが実績もあり重用されていた。彼らと比較すると利家はライバル佐々成政らと同様、ランクでは少し下といったところ。
信長死後、一時は秀吉と激突することもあったが(賤ヶ岳合戦)、時代の趨勢を的確に読み、秀吉との対決姿勢を転じ、敵対するどころか領地として加賀、能登を安堵され、秀吉政権を支える五大老の一人となる。この辺りは処世術というか、下手に争いを求めない利家夫妻の信念も感じられる。それでも地味な役割だ。
秀吉の晩年、幼い秀頼の傅役(もりやく)となるなるほど重用され、家康が長生きしなければ天下も望めたくらいの位置にまで達した。しかし天下を望む意思は家康ほど強烈ではなく、秀吉が死ぬと、翌年彼を追うようにして世を去る。
利家死後は”まつ”が前田家安泰のために奔走し、加賀百万石の礎は確固なものとなり、お家は江戸時代を生き抜くことになる。
こう見てくると、やはり地味な前田家だが、戦国の世を終わらせ、天下安寧のために戦い続け、とりあえずは江戸末期までの大乱のない平和な国作りに貢献したという功績は認めなければいけないだろう。
短い100のトピックから構成されていて読みやすい。利家への誤解(低い評価)も多少は解消されたかも。
更新日: 02/08/24
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