読書メモ

・「臨床心理学と人間(新版) 〜「こころ」の専門家の学問ばなし
(林昭仁、駒米勝利:編、 \1,500、三五館) : 2002.11.16

内容と感想:
 
気が向くと「こころ」に関わるような本を適当に読んだりしてきたが、最近目にした「臨床心理学」(Clinical Phychology)という言葉は、また何やら難しそうな学問が出てきたとも思わせたが「臨床」が冠せられるように単なる机上だけの学問(という私のイメージ)「心理学」ではないのかも?とも感じさせた。
 気になったのでインターネット書店の書籍検索で「臨床心理学」を探してみるとけっこうな数の本がリストアップされた。その中でも本書は第二版として最近発行されたばかりでもあり、内容の良し悪しはネットの情報だけでは判断できなかったが、もともと他の書籍を注文するつもりであったので、ついでに注文した。いったい「臨床心理学」とは何なのか?こころの時代と言われる現代を癒す薬になるのだろうか?と期待を持って読んでみる。

第T章 私さがしの旅

 臨床心理に携わる5名の専門家が「臨床心理学」との出会いを語る。

第U章 軌跡をたどる

 臨床心理学の歴史と他の学問との関連などを示す。

第V章 基礎を知る

 臨床心理学の基本知識と心理療法について解説する。

第W章 実践に学ぶ

 「臨床」とあるようにこの学問は現場が重要。臨床心理学の活動の対象となる領域や、心理療法の事例、臨床心理士となるための情報も示される。

第X章 未来を描く

 多くの専門家からのメッセージや、臨床心理学の今後の展望・課題が述べられる。

 臨床心理士という資格がある。これはこころの病気を癒すお医者さんである。治療をするという点では外科や内科の医師と違いはない。一般にはセラピストとかカウンセラーと呼ばれる。実は先日、会社がセッティングしてくれたメンタルヘルス(心の健康?)の時間(約30分)に産業カウンセラーなる方とお話をした(企業がこういう場を設けるのも社員の精神的な健康にも配慮するようになったということで良い傾向だろう)。簡単な心理テストのようなものをして、その結果を診て私の性格を分析し、アドバイスをして下さった。そのときのテスト結果を表す図がエゴグラムというものであったが(本書P.137にもちょっとだけ出てくる)、なるほどそうかと納得の部分もあり、疑問も部分もあった。しかし短時間である程度のことが分かってしまうテストに、少し驚きと戸惑いを感じたのは事実で、本書を読むきっかけの一つにもなったのである。このときのもう一つの驚きは人の性格は遺伝的な要素も一部にあるという話。子は性格まで親の遺伝子を受け継ぐらしい。ただし遺伝要因だけではないので、日頃の訓練で弱点をカバーしたりすることは出来るそうである。
 ところで「病は気から」という言葉がある。精神的な問題が原因で肉体的に疾患を来たす例が多い。胃が痛くなったりとか。またTVで見たある医師の癌治療法は手術ではなく、気持ちの持ち方で人間に備わった自然治癒力を最大限に発揮させ治そうとするものであった。これがどの程度の癌や病気に効果があるかは明らかではないが、自分でも罹る日頃ちょっとした風邪や腹痛などは特に医師に診せなくても自然に治癒するものである。何が言いたかったというと、いわゆる医学的な治療と臨床心理学のような治療の連携で、より効果的な治療につながるのではないかという点。これと同じようなことを本書中で語っている方もおられた。
 私が今後、セラピストとかカウンセラーになるかどうかは別としても、高度で複雑な社会システムとなり、これに伴い臨床心理のニーズは高まるばかりと言う。そんな現代に緊急かつ最大の課題は第X章の終わりに書かれているように、科学技術の進歩は人類の歴史を自ら消すほどの力をもたらしてしまっており、その悪魔の力を解き放つかどうかは人間の「こころ」次第。その引き金となる戦争、殺戮、憎悪をなくしていくためにも「病んだ世界を癒す」ことが課題ということである。提案だが、まず世界の指導者たちから精神分析を義務付けてはいかがなものか?カウンセリングの結果、治療が必要と認められた方は一旦、表舞台から引いてもらって・・・。そんな簡単にはいかないでしょうが。
 アメリカ映画ではよくセラピストとかが登場するが、日本ではまだ一般的ではないように思える。でも最近は「癒し系」が受けるように、そのうち日本でもかかりつけの医師と同じようにセラピストとかが必要になるのだろう。

更新日: 02/11/16