読書メモ
・「ロボットだって恋をする」
(築地達郎+京都経済新聞社取材班・著、 \660、中公新書ラクレ、中央公論新社)
: 2001.08.18
内容と感想:
「ロボットは恋をするか?」という題だったら如何にもで、硬そうな内容を予想してしまうが、「恋をする」と言い切ってしまう潔さ。元々、現在のロボットを巡る技術的、経済的な環境に興味があり書店で偶然手にして、思わず購入。
1999年、ソニーが限定発売したエンタテイメントロボット「AIBO」(第一世代)の出現は衝撃的だった。玩具としては25万円と高額だが即完売となったのにも驚かされた。25万円の価値を見出せた人には高くもないのだろうが、当時は日本にはまだまだ金持ちがいるものだと思ったもの。現在は世代も変わり、量産され始めたようで、ビジネスになるとの判断だ。
更にはホンダが開発した2足歩行ロボットの登場にも、なぜ自動車メーカーが?と思ったもの。その動きは多少ぎこちなかったが、(STAR
WARSのC3POのように)中に人間が入っているのでは?と思うくらい、よく出来ていた。(最近では「ASIMO」という小型軽量の型も登場。CMで子供と踊っていたのが印象的だった。)
本書は、現在のロボット開発の最前線を取材したもの(インタビューもある)をもとに、未来への展望を論じ、ロボットが身近な存在となる未来は、人間の存在意義を問われる社会になっているだろうと結んでいる。
目次を載せておく。
第1章:恋するロボット
第2章:目覚めるロボット起業家たち
第3章:ロボットのいる社会と経済
第4章:ボノボ≒ヒト≒ロボット(認知科学研究の最前線から)
第5章:「新人類」としてのロボット
タイムリーに現在公開中のスピルバーグ映画「A.I」は人間型ロボットが主人公の話らしい。AI(Artificial
Intelligence)は人工知能と訳され、ちょっとした歴史もある概念である。エンジニアの端くれとしては、初めてこの語に接したときには、まさに未来を感じたものだ。形はどうあれ、AIの流れをくむ技術は現実に生かされている。それが映画の題名になるという。それもこれも、人型ロボットが現実のものになりつつあることも背景にあるのではなかろうか?残念ながらまだ映画は見ていない(大体なかみが想像できてしまうので、映画館にまで足は向かない)。
本書を読むうちにロボットを考えることは、人間を理解することだということを実感した。
我々人間は、ロボットをより我々に近づくように開発しつつある。かつて産業用ロボットに危険で単調な作業を人間の変わりにさせてきたように、人型ロボットにより高度な仕事を人間に替わってやらせようとしている。しかし単なる肉体労働であれば知能は不要だ。人間の気持ちを癒したり、楽しませたりといった、人間の心の中にまで彼らの踏み込む領域が拡大すると、ロボットが人間の心を理解しなければいけないことになる。
人間の気持ちを理解できるようになったロボットなら、恋もするんじゃないか。そこから本書の題名が生まれたのだろう。果たして人間はロボットに恋してもらえるのだろうか?人間がロボットに恋してしまうこともあるんだろうか?この問いは多くのSF小説などで取り上げられ、本気で取り組んでいる研究者もいるはずだ。
自動車が日常生活にこれほど入り込んできた現代、好む好まざるに関わらず近い将来、同じようにロボットが我々の身近な所に入り込んでくるはずだ。そのとき人間はどこで何をしているのだろう。居場所はあるのか?。
更新日: 01/08/18
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